この事例の依頼主
男性
相談前の状況
ある会社で数年間働いていましたが、相当な時間数の残業をしていたのに、残業代(時間外割増、休日割増、深夜割増)がほとんど支払われていませんでした。有給休暇の取得をめぐるトラブルと、会社に嫌気がさしていたことから、退職。その後、残業代の未払いがあるのではないかと考え、弁護士に相談しました。
解決への流れ
相談の結果、すぐに請求をしないと時効によって請求できなくなってしまう部分があると思われたため、弁護士に依頼。(給与債権は、現行法では2年間で時効消滅してしまいます。それを防ぐには、基本的には裁判などを起こす必要がありますが、その前に相手方に請求をしておくことで、半年だけ時効までの期間を伸ばすことができますので、その間に裁判の準備をします。)弁護士は、直ちに相手方の会社に対して請求書を送り、合わせてタイムカードや就業規則などの資料を開示するよう求めました。すると、数週間後に資料が送られてきたので、それをもとに計算したところ、やはり数百万円の残業代が未払いになっていると思われました。相手方にも弁護士がついたので、弁護士同士で交渉をしましたが、半年の間に妥結できなかったため、労働審判を申し立てました。その結果、満額ではないものの、相当部分の金額を回収することができました。
たまに、10年も前の残業代請求を相談されることもありますが、時効にかかっていて請求できないという回答をせざるを得ないことがあります。(常に請求できないというわけではないので、ご相談自体はぜひしていただければと思います。)時効を見据えながら、どういう手続を選択したら良いのかを的確に選択できるのは、弁護士に依頼するメリットといえます。ご依頼者様の都合によって、早期解決を優先するのか、じっくり腰を据えて戦うべきなのかも違ってきます。この事件では、比較的早期に解決したいというご依頼者様の要望があり、また労働審判でも扱えるそれほど複雑でない事件であったため、労働審判を選択しました。なお、労働審判という手続は、訴訟よりも早く解決しやすい手続なのですが、その分準備をしっかりする必要があるため、弁護士をつけないでやることはおすすめできません。さらに、今回は退職後のご相談だったので、裁判等をためらう理由はなかったのですが、在職中だと裁判等を利用することが難しい場合も少なくありません。このような場合には、調停など第三者を間に入れて話し合う手続を利用することも考えられます。また、労働基準監督署に指導を求めたり、労働組合に加入して団体交渉によって解決を図ったりする道もあります。