この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
相談者は,子どもを出産した後,年に数回の頻度で夫からグーで顔を殴られたり,髪の毛をつかんで部屋の中を引き回されるなどの暴力をふるわれるようになった。親族に相談しても,「我慢が足りない」「子どものためにも我慢すべき」「年に数回殴られるくらいで大げさだ」などと言われ,相談者はさらに傷ついた。見かねた子どもから,夫と離婚した方がいいと言われたことをきっかけに,相談者から夫に離婚したいと切り出したところ,夫は「他に男ができたからか」「お前が全部悪い」などと言って相談者を責めたかと思えば,「自分の悪いところは直す」などと言ってなだめすかそうとしたりして,離婚に応じない。
解決への流れ
離婚調停を申し立てたが,相手方が離婚には一切応じないとの姿勢を変えず,調停は不成立のまま終わった。その後,裁判を起こし,互いの弁護士を通じて交渉を重ねた。その結果,相手方から慰謝料を支払ってもらった上で,離婚するとの内容で和解できた。なお,和解では,親権,養育費,年金分割も認められた。
夫婦は,家庭を維持するために,買いたいものを我慢したり,自分の自由に使える時間が制限されたりと,「我慢」を求められる場面がたくさんあります。しかし,そうした「我慢」は,将来の貯蓄のためであったり,家族サービスのためなど,円満な家庭を維持するためのものです。配偶者からの暴力を「我慢しなさい」と言うことは,「理不尽なことでも抵抗するな」と言っていることと同じで,円満な家庭を維持するための我慢とは別物です。そのような「我慢」は強いられるべきではありません。お子さんのことを考えて,離婚をおもいとどまるという方は少なくありません。場合によっては,離婚という形をとらずに別の解決策が見つかることもあります。本件では,離婚という形で決着がつきましたが,いずれにしても,配偶者からの暴力は「解決」すべき問題ではあっても「我慢」すべきものではありません。悩んでおられる方がいらっしゃるなら,是非一度ご相談ください。