この事例の依頼主
男性
相談前の状況
依頼者の方は、イベント会社に勤務していましたが、月100時間を優に超える長時間労働と、社長からの苛烈なパワーハラスメントを受けて、うつ病になり、自殺未遂をするまでに追い込まれました。依頼者が私のところにご相談に来られたのは、自殺未遂のしばらく後でした。
解決への流れ
ご相談をお受けしてすぐに、依頼者の職場が大変な問題のある職場であると言うことは分かりましたが、そのことを示す証拠が何もなかったため、まずは会社に対して証拠保全を行うことにしました。依頼者については職場でタイムカードが設けられていなかったため、労働時間を証明するための資料として、依頼者から社長に宛てた大量のメールを証拠保全しました。メールの中には、日付が変わって午前0時以降に送られたものも多数あり、本当に長時間の労働を強いられていたことがうかがわれました。この証拠保全で押さえた証拠を基に、まずは労基署に労災申請を行いました。そして並行してすぐに、会社に対してまずは残業代請求訴訟を提起しました。労災が無事認められたことを受けて、今度は、会社に対して、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟もあわせて提起しました。訴訟は順調に進んでいましたが、なんと、訴訟審理中に、被告となっている会社自体が破産を申し立ててしまいました。このため、社長本人を新たに訴訟の被告に加え、取締役としての責任を追及することにしました。会社は破産しましたが、社長に対する訴訟は続き、証人尋問を経て、最終的に、解決金の支払とあわせて、社長が過重労働とパワハラによる法的責任を認めて謝罪する、という内容での和解をすることができました。
本件は、自殺未遂という本当に悲惨な出来事から生還された依頼者の事件であり、絶対に負けられないという思いで挑んだ事案でした。また、証拠保全から、労災申請、残業代請求訴訟、安全配慮義務違反請求訴訟、さらに取締役に対する責任追及訴訟と、労災事件の手続をまさにフルコースで行ったという点でも思い出深い案件です。責任を問うべき企業が倒産してしまったのは残念でしたが、諸悪の根源であった社長に法的責任を認めさせ、謝罪させることができたことで、依頼者の方も納得することができました。担当した弁護士として、忘れがたい案件の一つです。